ブックレポート 感情:ヒトを動かしている適応プログラム 00-1.1
BOOK REPORT
コレクション認知科学9
感情:人を動かしている適応プログラム
戸田 正直
こちらは私の読書まとめ兼 ブックレポートに近いものになります。
心理学の中ではニッチな部類である「感情」についての本です。
タイトルに書かれているとおり、これは生物が生存するための「プログラム」です。
普段ビジネスパーソンの足を引っ張ってばかりいるようにみえる「感情」について、良かったら一緒に知見を深めましょう。 KEI
導入
- 「感情」は文学や宗教が遠い昔から 人間感情の様々な働きについて飽きることなく描写し続けていることから、人間の心にとって本質的な意味をもつのは明らか
- だが文学は感情の様々な様態を書き出してくれ、宗教は”愛”だとか”慈悲”だとか幾つかの感情を高く評価し”憎しみ”や”怒り”、”妬み”などの感情を持つことを戒めるが、なぜヒトに良い感情と悪い感情が与えられているのか、説得力のある説明を持たない。
- そこで「心の科学」を目指す心理学ではどういう説明を与えているのかが問題になる。
- 軽視されていて、今まで一度も心理学の主流になることはなかった。
- いままで心理学が取り上げてきた知覚、学習、記憶、そして認知科学が題材としたのは「知」であり、このような心の働きが人間が生きて行く上で不可欠なのは誰の目にも明らか。
- 一方、感情という心の働きは人間のために何をしてくれるのか今ひとつ不明
- 文学の主題には適切だが科学の研究対象としては緊急性に欠けている
- 本来知的であるべき人間の心の正常な働きを妨げる雑音と言う主張すらある
- 最近は重要度が世界に認められてきたが教科書の項目の小ささや記述の貧相さをみると、あってもなくてもいい存在扱いされているのがわかる。
1.1 感情の謎
- 初めは筆者も人間にべそをかかせ、げらげら笑わせ、妬みで足を引っ張り、面当て自殺をさせる、感情、それに合理性を発見するのは至難の業に思えた。
- しかしHebb, Thompson が1954に行った実験でヒントを与えられた
- チンパンジーの行動とトリガー状況の関係は彼が多くの感情レパートリーをヒトと共有していることを示唆する
- 恐れや怒りからの逃走、脅し、攻撃といった「状況対処行動」はずいぶん原始的な動物においてもみることができた。
- このことから感情は状況対処行動のシステムとして何億年もの歳月をかけて主とともに進化してきたシステムであると仮説を立てた。
- 進化は厳しい過程なので場合によっては無用に見えてもまったく不合理なものが拡大、発展することはあり得ない。よって感情の動きに「合理性」を発見しようと試みることに十分な意味がある、やるのは無駄ではないと証明できた。